アレルギー外来Allergy
アレルギーとは
原因、症状・出現までの時間・重症度などにより、ひとりひとり治療方法が異なる疾患であるという認識を持つことが重要です。
血液検査の数値だけを見て安易に厳しい食事指導がなされていたり、解除の時期についての適切な指示がなされていない場合も多くみられます。
川村小児科では、これまでアレルギー外来で携わってきた臨床経験をもとに、最も適切な治療や対策を十分な説明のもとに行い、定期的に診察させていただいています。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、アレルギー反応だけが原因ではなく、水分保持機能の低下、つまり乾燥肌が大きな要因です。
アトピー性皮膚炎の患者さんの肌は、健康な方の肌よりも、もともと乾燥しているという特徴があります。
乾燥肌では、皮膚表面を保護する膜(角質層)が障害を受け、薄くもろくなった状態になっているため、バリア機能が不十分で、汗や衣類、細菌などの刺激に弱く、さらに、アレルギーを起こす抗源も入りやすくなり、皮膚炎はますます悪化しやすくなります。
この他、日常の生活環境やストレスなど様々な要因が関与します。
特徴
- 1.湿疹が慢性に経過する。
- 2.かゆみを伴い、かくことによって悪化する。
- 3.各年齢によって、症状に特徴がある。
- 4.アトピー性皮膚炎を引き起こす遺伝的体質がある。
- 5.子供に多く、成人になるにしたがって軽くなる傾向がある。
- 6.生活環境の中に病気を悪化させる要因がある場合が少なくない。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮フ炎の三本柱
- 原因悪化因子の除去
- スキンケア
- 薬物療法
アトピー性皮膚炎は、短期間に完治させることができる病気ではありませんが、症状が軽い状態を維持することは可能であり、良い状態を保つことにより、自然に治ることも珍しくありません。
主な治療薬
ステロイド外用剤
炎症や免疫の働きを抑える強い作用があり、アトピー性皮膚炎にも極めて有効です。強さにより大きく5段階に分類され、湿疹の程度、湿疹の生じた部位、年齢、治療経過に応じて適切に使い分けていく必要があります。
大部分の湿疹は、3群(medium)以下の強さで治療可能です。
顔にはできるだけ弱いものを選択します。
ただし、湿疹の重度の場合には、短期間のみより強いステロイド外用剤を使用し、湿疹を押さえ込む必要があります。その後、状態が良くなれば、ステップダウンします。
ステロイド外用薬剤を必要以上に怖がり、十分使用されなかった場合や、勝手な判断で外用を中断すると、悪化してしまうことがあります。
また、漫然と塗り続けることも良くありません。必ず定期的な診察を受けてください。
タクロリムス軟膏(プロトピック)
現在小児用は2歳以上に適用があります。ステロイド外用剤に比べて、副作用が少なく、リバウンドも軽いと言われています。
小児用は0.03%(成人用は0.1%)と炎症を抑える力はさほど強くないので、湿疹の程度の強いときはステロイド外用剤で軽減させ、その後プロトピック軟膏に変更し、状態を維持していく方法を行っています。
ヤヌスキーゼ阻害薬(コレクチム)2020年6月成人用0.5%
2021年3月小児用0.25%発売
コレクチム軟膏は、細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすヤヌスキーゼ(JAK)の働きを阻害し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することでアトピー性皮膚炎を改善する、非ステロイド性の世界初の外用JAK阻害剤です。
- 『ステロイド』は短期使用にはよく効いていいが、長期使用では皮膚萎縮などの副作用が心配(もちろん、医師の指導の下であれば安全なお薬ですので過剰に怖がる必要はありません。)
- 『プロトピック軟膏』は塗った後にピリピリとした刺激感が強くて苦手
このような副作用が心配の方におすすめです。
コレクチムは副作用が出づらく、長期間使用しやすい新しい薬剤です。
ミチーガ(注射薬)2022年8月発売
デュピクセント(注射薬)2018年4月発売
今までの外用・内服では不十分な成人アトピー性皮フ炎の患者さまで、痒み皮フ病変での条件を満たす場合、使用可能
スキンケア
アトピー性皮膚炎では、水分保持能力の低下という皮膚の機能異常の問題が大きく関与しているため、スキンケアが大切です。
スキンケアで重要なことは、まず皮膚を清潔に保つことです。シャンプーや石鹸を使用し、汚れを洗い流し、入浴後は保湿剤(ワセリン・ヒルドイド)を十分に使用しましょう。
詳しいスキンケアの方法、外用剤の使用方法は、外来で十分な時間をかけて説明しています。
気管支喘息
喘息発作の強さについて
そのときの症状である喘息の発作の程度は、「発作の強度」といいます。咳だけで、日常生活は普通にできても、聴診器でヒューヒュー聞こえたりする場合は小発作、夜間咳で起きてしまったり、食欲はおちてしまったり、しっかりお話できなくなる、などまでの症状があれば中発作、など、体の酸素飽和度などの数値とあわせて判断します。
小さいお子さんでは、「咳が止まらない」、「咳あげしてしまう」「抱っこしているといいけど、横になれない」、「眠れない」などだけの症状もあります。
喘息の発作
発作の時には、気管支を取り巻いている薄い筋肉が縮んだり、気管支がむくんでしまったり、分泌物(痰)が増える、ということが同時に起こって、空気の通り道が狭くなり、ゼーゼー、ヒューヒューと音がします。お薬などで気管支がひろがると、もとのように楽になります。
昔は、喘息は発作が出たときだけ気管支を広げると考えられていました。ところが、最近には、空気の通り道に起こっているアレルギーなどの炎症で、それがくりかえす発作によって持続すると、気道が敏感になってしまい、気管支が狭いままで、もとのように戻らなくなってくるということがわかってきました。
今の喘息の治療方針は、起きてしまった発作をおさめるのではなく、「発作を起こらないようにする」という治療に変わってきました。いかに、発作のない期間をながくするか、ということが将来的な肺の機能にもつながってきます。
喘息の重症度
「喘息発作の強さ」と違い、「喘息の重症度」は、ある期間にどのくらいの喘息症状が、どのくらいの頻度で起こったか、ということや行っている治療をもとに判断します。
治療前の重症度と、治療を行っている状態での治療ステップ(どの程度の治療を行っているか)によって、それぞれの重症度は、間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型と分類します。
喘息悪化の原因
お子さんの喘息の90%はアレルギー体質があり、ダニアレルギーがあるといわれています。ホコリっぽいところに行くと咳が止まらなかったり、ゼーゼーいい始めるのはダニやホコリのアレルギーのある場合に起こることが多いです。
しかし、喘息を起こす悪化要因はたくさんあり、その患者さんによっても違います。
- 1.アレルゲン・・・アレルギー反応を起こす物質
- 血液検査や皮膚検査で簡単にわかります。ハウスダスト、ダニ、カビ、ペットの毛やフケなど、環境アレルゲンとよばれるものは、吸い込まれると、気道にアレルギー炎症をおこして発作をおこします。
こういう場合はまず、掃除が大切になってきます。ダニ、ホコリ、ペットの毛は掃除機かけでずいぶん減らすことができます。
- 2.感染症
- かぜはほとんどがウイルス感染ですが、ウイルスによっては気道に炎症をおこし、喘息発作をおこすことがあります。かぜの予防や、かぜをひいたら早めに治療、ということも発作の予防につながります。
- 3.運動
- 運動することによって、乾燥した冷気が気道にはいってきておこすのが「運動誘発喘息」です。
喘息が重いと、ちょっとした運動でも発作が起きますし、喘息の軽い人でも、マラソンのような強い運動をすれば発作が起きます。
特に、空気が乾燥して気温が低いと運動誘発喘息は起きやすくなります。
運動誘発喘息がある場合は、発作予防薬をすると症状改善につながります。
- 4.気象条件(温度、湿度、気圧の変化)
- 季節の変わりめで、朝夕の気温差が大きい、毎日の気温や湿度の変化が激しい、台風(低気圧)がやってくる、などで発作をおこりやすくなることがあります。
- 5.大気汚染
- 大気汚染物質で、敏感になった気管支がよけいに刺激されてしまいます。喘息の患者さんのいるご家庭では、タバコの煙は厳禁です。
ご家族にはぜひ禁煙していただけるといいです。
そのほか、線香や花火の煙も直接吸い込むと発作を起こしやすくなります。
- 6.心因、ストレス、疲労、睡眠不足
- 疲れがたまったり、寝不足になると発作が起きやすくなります。また、女性の場合は、月経のときにでやくなる方もあります。
気管支喘息の薬物療法
気管支喘息の治療には、大きく分けて「発作を予防する薬」と「発作が起きたときにおさめる薬」のふたつあります。
「発作を予防する薬」は、コントローラーといいます。
発作をおこさないようにコントロールする薬です。発作を繰り返していると、気管支の炎症がおさまらず、気管支がよけいに敏感になってしまいますので、それをおさえる必要があります。
タロイコトリエン拮抗薬(オノン、シングレア、キプレス)
ステロイド吸入薬
炎症をおさえるためには、このお薬が一番です。
フルタイド、キュバール、パルミコートなどいろいろ種類があり、その方の年齢などによってお薬の種類を決めていきます。
「ステロイド」とはいっても、吸入のお薬ですので、飲み薬や点滴で使用するものとは副作用は全く違い、しっかり決められた量を行っていれば、ほとんど問題ありません。発作がなかなかおさまらず、なかなか夜も眠れない、食事もとれない、普通に学校生活ができない、などの状態が続く方が問題は大きくなるので、しっかりとその方にあった治療を選択して様子をみることが大切です。
「発作が起きたときにおさめる薬」をレリーバーといいます。
起こってしまった発作は、気管支を広げないと苦しい状態が続いてしまいます。気管支拡張剤には、吸入も飲み薬、吸入の薬、貼り薬があります。発作になった場合使用しますが、これだけで喘息は治りません。
なるべく、気管支拡張剤を使わなくてよいように、コントローラーをうまく使うのが喘息の治療です。
特に、学童以上の患者さんの場合、レリーバーで「なおった」という自覚症状を強く感じるのですが、気管支で起きている炎症をしっかりおさえなければ治療できたことにならないので注意が必要です。
気管支喘息のガイドラインについて
子どもの喘息の治療には、専門の学会が作ったガイドラインというものがあります。専門医でない、一般の小児科医、臨床医にも正しい治療をしてもらおうというのがガイドラインです。(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012)もちろん、大人の喘息に関してもあります。
ガイドラインでは、子どもの喘息の重症度と年齢によって治療薬の選択が変わってきます。
初めて喘息と診断される年齢や発作が多いのは2歳から5歳なのですが、そのなかでも、年に1~2回風邪をひくとゼーゼーいうけれども、あとは元気、という場合は、間欠型で、その時だけの発作を抑える治療を短期間行うだけで構いません。
しかし、風邪をひくたびにゼーゼーいうとか、そういうエピソードが年に3~4回以上あるとか、風邪もひいていないのに日頃からゼーゼーいう場合には、軽症持続型といって、抗炎症作用のある「予防する薬」を続けて、発作がおこらないようにしなければいけません。まずは飲みやすく副作用もほとんどないロイコトリエン拮抗剤を飲んで、それが効かなければ、次に吸入療法に入ります。
「次の発作を起こさない」ように予防することが大切です。
喘息の治療の経過について
喘息の治療は、元気そうにみえる患者さんに毎日薬を内服したり吸入したりしなければいけないので、根気がいります。6ヶ月続けて発作をコントロールできれば薬を減らすことを検討できます。しかし、いつまでどれだけ続けるか、というのはその患者さんの年齢や重症度によってきます。
お困りのことがあれば、何でもご相談ください。
喘息の管理と日記、ピークフローモニタリング
喘息はきちんと決められた薬を使うこと、日常生活を規則正しくおこなうことが大切な病気です。生活や服薬の状況、症状を記録しておく日記は、発作のコントロールに重要な役目をします。
細かな数値のわかる肺機能の検査は、病院でしかできませんが、ピークフローメーターという簡単な器具をつかって、思いきり吹いたときの吐く息のスピードを測定すると、喘息の状態が家庭でもわかります。学童以上で、喘息の状態を細かくしる必要がある場合には、おすすめさせていただきます。発作が出始めると、自覚する前にこの数値が下がってくるので、日頃からこれを測定して記録しておくとよくわかります。ピークフローが下がってきたところで、気管支拡張剤やステロイド吸入を増やすなど、治療を強めると、大きな発作にならず家でコントロールすることができます。これをピークフローモニタリングといいます。
喘息の治療では患者さんの「自己管理(自分で病気を管理する)」というものが大切で、いかに、喘息のことをよく理解して、自分の喘息の状態を判断し、ちゃんと薬が続けられるか、ということが喘息を治していく上で大変重要です。
子どもの喘息は、大きくなったら治る、と昔は言われていました。しかし、最近の研究では、いったん治ったように見えても、呼吸機能が悪い状態が続いたり、大人になってから再発することがあるといわれています。
気管支が成長して大きくなる過程でどのように治療して、いかに気管支で起きている慢性的な炎症をおさえていくかということが喘息の治療で重要です。
アレルギー性鼻炎
空気中に浮遊するアレルギー物質(ダニ、ハウスダスト、カビ、花粉など)を吸い込むことで、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状がでる病気です。花粉(スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなど)による季節性のタイプ(花粉症)と普段から身の回りに存在するダニやハウスダスト、カビなどによる通年性のタイプに分けられます。症状が重症な場合は、だるい、夜眠れない、学業に集中できないといった日常生活に支障をきたすこともあります。
問診、鼻粘膜の所見、血液検査、皮膚テストなどから診断します。血液検査や皮膚テストで原因検索を行います。
薬物療法
症状を和らげるため、抗ヒスタミン薬の内服と点眼薬、ステロイド点鼻薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬などを使用します。
症状や重症度に応じて、これらの薬を組み合わせて治療を行うことがあります。
舌下免疫療法
アレルギー性鼻炎を根本的に治すことが期待できる唯一の治療です。この治療は、ダニやスギなどのアレルギーの原因となるアレルゲンを少量から投与することで体をアレルゲンに慣らし、根本から治す治療です。
具体的には1日1回小さいタブレット錠を舌の下に置いて、1分間溶けるのを待って飲み込むだけです。治療期間は3~5年と長期になりますが、正しく治療を行うと治療終了後も長期にわたって、症状を抑えることができます。
日本では5歳以上のスギ花粉症とダニのアレルギー性鼻炎に保険適応があります。当院でも、舌下免疫療法を行っています。5歳以上で、鼻炎症状でお困りの方はお気軽にご相談ください。
食物アレルギー
食物アレルギーの症状は多様で、皮膚症状としてのじんましん・湿疹や、消化器症状としての悪心・嘔吐・下痢や、咳・喘息などの呼吸器症状、重度のものでは全身反応を起こし、血圧が下がるアナフィラキシーショックなどがあります。
アトピー性皮膚炎の原因の一つに、食物アレルギーがあり、特に乳児型では多いですが、原因抗源がはっきりしていないのに、必要のない食物に対して厳格な食事制限をしていたり、血液検査のみを行いあいまいな食事指導がなされていたり、適格な解除の説明がなされずに何年も過ぎているケースがありますが、乳幼児の成長・発達に大変危険です。
お子さんは本当に食物アレルギーの症状があるのか、また、本当に食物除去が必要なのか、どの程度までの制限が必要なのか等を、専門医のもとで慎重に診断することが大切です。
必ずご相談ください。