コラム
Column
低年齢で治療を始めたほうが効果が大きい
この頃他の子に比べて背が低いからと診察に来られる子どもの両親(特に父親)にしばしば見られる傾向の一つをお話しましょう。
今も一年間に3~4cmは背が伸びているのだからもう少し先に診察を受けるのでもよいと思っていた、あるいは医学が進歩しているのだからいつでも診察の時期は良いと思っていたなどがあります。本当にそうでしょうか?
成長科学協会のデータのまとめでは、成長ホルモン分泌が悪くて低身長で治療が終わり成人に達した人について調べてみると、治療開始年齢の平均は12歳から13歳半でした。その後ずっと治療を続けていたのですが、最終身長は男性159cm、女性148cmに達していない人が約35~40%もいることが分かったのです。
この原因は治療を始める年齢が遅すぎることにあるとされています。
成長ホルモン分泌が不足の人達に成長ホルモンによる治療をした場合と、正常の人との思春期以後の身長の伸びに差がないことが分かったのです。
では、成長ホルモン不足で治療を受けた人たちで最終身長が極端に小さいままで終わった原因は何だったのでしょうか?それは治療開始年齢が12歳~13歳半と遅いため思春期が始まる前にはあまりに長い期間治療を受けられず思春期が始まった時には正常児との間に大きな差があり、この差をこの後うめられないまま最終身長になってしまっているのです。
今でも治療開始の一番良い時期は小学校入学時、すなわち6歳前後と言われてきましたが、最近ではもっと早期に、すなわち3歳児健診以後が注目されるようになりました。
治療効果を見ると治療を開始した最初の年は今までの身長の伸びの2~2.5倍位の速さで身長が伸びるのですが、その後数年がたつと治療薬に対する慣れの現象が出て、少しずつ年間身長の伸びは初年度ほどは伸びないようになります。
従って思春期が来るまでに出来るだけ正常児と同じくらいの身長まで持っていきたいこと、治療を始めて毎年同じだけ身長が伸びるのではなく、年数に従って少しずつ伸び率が低下するのでその分を見込む必要があることなどから早期診断、早期治療が強調されますし、重症例に対しては従来の小学校入学時と言われていた最適時期がもう少し早くなりそうなのです。
以上述べてきたことからもお分かりのように、「成長」のような子どもの生涯の初期の一時期にしか見られないものを考える時には、必ず最適の時期があり、前述の両親のように「いつでも良い」とか、「もうしばらく様子をみていよう」と言った消極的な態度では普通の子と同じ身長にはならないことは分かっていただけたと思います。
各年齢の低身長の目安の一覧表を掲げておきましたので検討されてはいかがでしょうか。
低身長の目安(表の数値以下が低身長)
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年齢 | |||||||||||||||
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2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5 | 7.5 | 8.5 | 9.5 | 10.5 | 11.5 | 12.5 | 13.5 | 14.5 | 15.5 | 16.5 | |
男(cm) | 84 | 91 | 97 | 103 | 107 | 112 | 118 | 122 | 127 | 131 | 136 | 143 | 151 | 156 | 158 |
女(cm) | 83 | 90 | 97 | 103 | 106 | 112 | 117 | 121 | 126 | 133 | 140 | 144 | 146 | 147 | 147 |
※諏訪琥三先生作成の「1990年版 横断的成長曲線」より