最近の身長追跡研究の結果は、小学1年生時の身長の順位は成長した時と良く相関することを示しています。わかりやすく言うと小学1年生の時、背の低い子は成長しても背が低いままのことが多いのです。

ただこれも例外があっていわゆる「おくて」つまり、体質性思春期遅発症の場合は経過が異なります。男児で1４才までに精巣容量の増大がない場合、女児で13才までに胸のふくらみが出現しない場合は思春期遅発です。この場合自然に待っていれば身長スピードが遅れて発来するため最終身長は改善します。

しかしこれは両親のどちらかがこうした「おくて」であっても子供全員にこの傾向を遺伝するわけではないので、これに全ての期待をかけて、一番背の伸びる時期に何も対策を立てずにいるのは良いことではありません。専門医を受診し、検査した上で経過をみてよいものか見極めてもらう必要があります。

では、なぜ小学１．２年で背の低い子は大きく伸びないこと多いのか調べてみますと、こうした子供は圧倒的に幼少期の食が細く、小学校入学後もその習慣はかわらないため、標準身長の子より1年間の身長の伸びは少ないのです。
しかし、どこの親も欲目でわが子を見ますから、そのうちには大きくなるはずだ、高校生になっても背が伸びた子がいるからわが子もそうなるだろうと言う希望的観測で中学生後半になる迄、放置している家庭が多いようです。

年間身長の伸びでは、第二次性徴出現後にスパートとして急速に身長の伸びる時期があります。
男子の標準は１年に10㎝、女子で８．２㎝ですが、小柄な子に多い年間身長の伸びの悪い場合では男子7cm、女子6cmしかなく、ここでさらに大きく差が開きます。結局小学1年生時平均身長があり、毎年の身長の伸びも標準だけあれば、最終の身長の急伸するスパートも大きいのですが、小１の時、最前列にいる背の低い子で、毎年の伸びも標準に足りない子は身長の伸びでの最後のジャンプ期にもあまり大きく伸びず、成人した時、結局背の低い方に入ってしまうことが多いと言えましょう。

従って身長の伸びは急成長した後、その翌年は半分の伸び（前年10ｃｍ伸びれば次の年は４～５㎝となる）となりその翌年はさらにその半分の２～3ｃｍとなり第二次性徴出現後2年位で身長の伸びは止まってしまうのです。二次性徴が出現する前に少しでもグラフの上に近づくことが大切でして、100人中前から２～3人ぐらいに入る低身長の子の身長を伸ばすには男子で11～12才まで、女子で10才までと言われる理由はここにあります。
理想を言えば、小1の時に身長がとても低ければ、この時点で専門医を受診し、対策を考えることが最良です。
小学校の新入生時は新しいことの連続で親子とも忙しい時期ですが、校庭に並んだわが子の身長から将来の姿を予測し、考えることも親の務めの一つのようです。

名誉院長　　川村 正彦